<第36回 日本骨髄腫研究会総会参加報告書>
日時;平成23年11月12日(土)~13日(日)
場所;品川、東京カンファレンスセンター
学会長;国立国際医療研究センター 高度先進医療部長 三輪 哲義
報告者;大塚 博之
本年度の総会は将来のTPPを意識してか、発表の約40%強が英語の発表であった。 其のセッションでは海外から招聘されたDrもチェアーマンとなり、各演者にに対してコ メント、質問がなされ今までになくアカデミックな状況の中で進められた。本研究会は 来年、学会に昇格し、同時に国際ミエローマ研究会が日本で開催される。今までも 循環器学会総会等では、英語での発表のセッションが多く見られていたが、今後は 国内の学会の多くで英語での発表が義務づけられる様になる事が予想される。
近年ミエローマ(MM)に関しては多くの新薬が発売、現在開発中の品目が多く、一頃と 違って、元気のある学会になっている。以下に幾つかの発表に内容をご紹介いたします。
MMは形質細胞が癌化している為多くの異常なたんぱく質が産生され非常に多くの臨床 症状を呈す病態である。今回非常にまれではあるが初発の症状として、MMと診断されず、 神経内科の診察マターになる様な病態に関しての報告が有ったので紹介する
1)PEMS(Crou-Fukase)症候群におけるサリドマイド治療の有用性について 免疫グロブリンを産生する形質細胞が異常な増殖を来たし、 これに伴って単クローン性に特殊なたんぱく質(血管内皮増殖因子:VEGF)が 過剰産生され、それによる、末梢神経障害、手足のしびれ、皮膚の変化 (色素沈着、剛毛、血管腫)、胸水、腹水の貯留等のさまざまな症状を呈す MMの病態である。病状の進行に従って、手足の麻痺の進行による、 歩行障害、大量の胸水、腹水の貯留による腎不全の進行を認める。 治療法としてはAutoの移植療法が推奨されているが、保険適応にはなっていない。 高齢者、全身状態不良、軽度症状患者等は移植の対象とはならない。 これらの患者に対してはサリドマイドの治療が有効で有あるとの報告である。 すなわちサレドカプセル(100-30/日)及びデキサメタゾン(12mg/me2)4日間/月)による 治療を実施した。その結果平均31カ月で神経症状、浮腫、胸腹水の減少等の臨床症状の 改善を見た。Autoの移植後の5年後の再発率は24%であった。
2)Transplantation and Cell therapy inn the era of novel agents
Gosta Gahrto, M.D.,Ph.D.
Karolinska Institutet,Karolinska University Hospital,Sweden
新規薬剤が出ている時代における移植と細胞療法についての講演です。 自家幹細胞移植(ASCT)は海外では65-70才までのMM患者においては選択的に 治療されている。一方でサリドマイド、レナリドミド、ボルテゾミブ、カーフィルゾミブ、 ポマリドミド、等の新規薬剤が増える中、ASCTはこれら新規薬剤と組み合わせて 治療されている。最良の治療を決定する事の難しさに加え、ASCTでは2回めも ASCTかAlloSCTを実施するなど、タンデムの移植も行われている。 更にAlloSCT治療に際し予後の改善を図る為、ドナーT細胞、NK細胞、 間葉系細胞(MSC)などの細胞治療が組み込まれた治療も行われている。 リコメンドされるASCT前の導入療法は低用量ボルテゾミブ+低用量サリドマイド+ デキサメタゾン(VTD)療法、又はレナリドミド+デキサメタゾン療法があげられる。 ASCT時のコンディショニングとしてはメルファラン200mg/me2が一般的であるのに対し、 維持療法はかなりの議論がある。サリドマイド維持療法もレナリドミド維持療法も 有意にPFSの延長は認められるが、OSの改善には至っていない。レナリドミド維持療法は 二次発癌の可能性が示されている。 最近EBMTではASCT後の再発に対するVTD vs TDの結果が示され3剤併用群の方が PFS,奏効率で優れているが、多発性神経障害の発現頻度が高い事が占めされている。 現在議論となっている治療法に骨髄破壊的前処置、あるいは骨髄非破壊的前処置(RIC) と共に用いられるAlloSCTがあげられる。これはアップフロント、又は1回目のASCTと タンデムで行う事も可能であり、更にASCT後のRIC AlloSCTはMMと言えどCRへの導入を 論じる事の可能性を示している。 EBMTで357例が登録され観察期間の中央値は61ヶ月の結果が報告されている。 108例がASCT-RIC AlloSCT群、249例がASCT群に割り付けられた。 コンディショニングは2Gyの放射線照射+フルダラビンが用いられた。 ITT 解析では、60ヶ月におけるPFSおよびOSはRIC AlloSCT群がASCT群よりで 優れており、それぞれPFS:35%vs18%及びOS:65%vs58%であった。 我が国においてはAlloSCT及びRIC AlloASCTに関してもMM患者に対しての治療法に 関しては論議を呼ぶところであり、分子標的療法からの再発症例に対しても論議を 呼ぶところで、再発難治の標準的治療に組み入れられるには未だ遠いと感じられた。
以上